■人は「心のコップ」をもっている。「心のコップ」には日常生活で否定的ストロークやディスカウントなどを受けたことによるストレスがたまっていく。

「心のコップ」には許容量がある。自己評価の低い人のストレスが許容量を超えると心身症、非行、ひきこもりなどの症状が発現する。

「心のコップ」は他者から『受容』されることによって空になる。それは、話を聞いてもらうこと(無条件の肯定的ストローク)である。

しかし、「心のコップ」がいっぱいの人は、他者を『受容』することができない。もし、子どもの両親の「心のコップ」がすでにいっぱいであるとすれば、両親は子どもを『受容』することができない。

また、時間的な制約で子どもの話を聞くことができない場合も、親は子どもの「心のコップ」を空にしてやることができない。

人は、無条件に自分を『受容』してくれる「安全基地」を持つことで社会の競争に耐えることができる。普通、その安全基地は家庭である。

会社や学校で傷ついても、家庭に帰って「心のコップ」を空にしてもらうことで、また競争に参加することができるのだ。

しかし、家庭が「安全基地」として機能していない場合、つまり、親の「心のコップ」がいっぱいか、親が不在である場合、子どもは外での社会生活に耐えることができない。

その具体的な例を「輝ける子」から引用しよう。

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 1章 「おれなんかおらんほうがいいんや」「自殺してやる」―キレる子たち (18p)
ある日、小学校の先生から、クラスの男の子のことでとても困っている、と相談を受けました。一年生の男子で、学校でたびたび、衝動的にカッとして暴力を振るい、とても手に負えない、というのです。

どういうことかというと、
●担任や友達が注意すると衝動的にカッとしてイスを投げたり、机の上の物を落としたりする。
●他の児童をいきなり叩いたり蹴ったりする。
●一週間に二回も窓ガラスを割る。
●根気が無くて勉強をなまける。
●授業中わざと大声を出して授業の邪魔をする。
●担任の先生の指示に従わなくて勝手な行動をとって、プイと教室から飛び出していく。
●言葉遣いが荒くて、すぐ挑発的な態度をとる。

かと思うと、「おれなんかおらんほうがいいんや」「自殺してやる」とか言ってすねる。自分の頭を机に打ちつけて自分を痛めつけるような行動をとる。(中略)

こういう子は、一体、なぜこんな行動に出ているのか、どう対応していったらいいのか、このことを通して、話をしていきたいと思います。

 2章 周りの言葉やちょっとした注意にも、いじめられていると思う子がいる (22p)

まず、この子の目立った特徴は、『対人関係が未熟である』ということです。

相手の気持ちを全然考えないで、自己中心的と言うか、わがままとしか見えない行動をとる。かと思うと、ちょっとした友達の言葉に傷ついて、暴力を振るう。ちっとも我慢ができない。

周りから見れば、こんな乱暴な子はいないと見えるのに、本人はどう思っているかというと、自分はクラスの皆からいじめられていると思っている。

「いじめているのはあんたやないか」と言いたくなるのですが、それだけ周りの言葉やちょっとした注意もいじめととってしまう、対人関係の問題がありました。

 3章 家に親がいないということだけで、子どもにどんどんモヤモヤがたまっていく (24p)

どうしてこういう状態になっているんだろうということで、お母さんにも来てもらったり、担任の先生を通して、状況を聞いていきました。

そうすると分かってきたことは、この子は、一人っ子なのですが、少し前から、お父さんが単身赴任で家にいない。お母さんは夜勤のある仕事で、残業も多く、要するに、この子が家に帰っても、独りぼっちの日がとても多い、ということが分かりました。

つまり、親と接する時間が圧倒的に少なかったのです。しかも、たまに一緒にいる時くらいせめて、お母さんに甘えられる時間になればいいんですけれども、宿題もして、晩ごはんも食べて、お風呂にも入って、次の日の準備もして、と、次から次とやることがいっぱいあるわけですね。

しかも、こういう子ですから、ぐずぐずして言うことを聞かないのです。そうすると、ついついお母さんは、「早くしなさい。早くしなさい」と叱ってしまう。

お母さんは、決してこの子に愛情がないわけではない。むしろ、人一倍、愛情をかけている。そのうえ、お父さんもいないなかで、仕事も家事も育児も一手に引き受けて、本当によくがんばっておられるんです。

人に言えない苦労もたくさんあったと思います。だからこそ、「子どもだって、ちょっとは協力してよ」という気持ちがあっても無理もないことです。

ただ、子どもには、なかなかそういう状況はわかりませんし、子どもとすれば、せっかくお母さんと一緒にいる時くらい甘えたいのに、実際は、せかされ叱られ通し、ということで、つらい気持ちがたまっていたのだと思います。

こういう情緒不安定な子どもを見ると、まず心の安心ができていないことが分かります。ですから、こういう子どもには、まず心の安心を与えてやることが大事です

子どもの心の安心をつくるのに、一番の特効薬は、やはり親がそばにいることです

たとえば、学校でなんか嫌なことがあると、モヤモヤとした気持ちのままで帰ってくる。家でも、ムスッとした顔をしている。

それにお母さんが気付いて、「どうしたの?」と聞くと、最初は、「別に」とか言っている。「何かあったんじゃないの?」とさらに聞くと、「実はこんなことがあって、友達にこんなこと言われて、今日はムカついとるんや」とか言って話し始める。

それを、お母さんは「そうか。そうか」と、話を聞いてやる。子どもも「ムカつく、あいつ」とか言うだけ言って、「そう、そりゃ腹立つわね」と言われると、気持ちも落ち着いて楽になる。

ところが、学校から帰って、嫌だったことをお母さんに話ができないまま、次の日になってしまうと、子どもはすぐ忘れてしまいます。だけど、モヤモヤした気持ちは残るんですね

なんでモヤモヤしているかは忘れるけど、モヤモヤした気持ちは残っている。ところが次の日もまた嫌な出来事が起こる。それもまた親に話せない。

そうするうちに、どんどん嫌な気持ちがたまってくる。この子の場合は、その蓄積の結果、こういう行動になったのではないかと思います。

大人であれば一週間前のことや二週間前のことを覚えていて、こんなことがあったと言えるんですけれど、子どもはその日に解消しないと、すぐ忘れてしまいます。

ですから、子どもの話を聞いてやるなら、その日のうちか、せめて次の日です。そういう意味で、親が家にいるというのは、子どもにとっては、すごく大事なことなんです。

もちろん親もいろんな事情があって、いつも家にいるわけにはいかないと思います。最近は共働きが多くて、なかなか子どもが帰ってくるときに、「お帰り」と言ってやれず、心苦しい思いをしているお母さんも多いと思います。

確かに、大人の事情は事情としてあるのですが、子どもにとってはやはり家に親がいないということだけで、どんどんモヤモヤがたまっていく理由になる

少なくとも私たちはそのことに、気づいてやって、接する時間が少なければなおさら、話しを聞く時間をつとめてとってやる必要があると思います。
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この親は肯定的ストロークを子どもにあまり与えず、否定的ストロークを多く与えていた。さらに、時間的な制約からじっくり子どもの話を聞いて『受容』することもできなかった。子どもはそれをディスカウントだと感じただろう。

その結果、この子は「自分は親にとって“処理しなければならない仕事の一つ”なんだ」と思うようになり、「自尊心」が著しく低下した。

そうして出た言葉が「おれなんかおらんほうがいいんや」「自殺してやる」、自分の存在は望まれていない、愛されていない、存在価値がないという、まぎれもなく”彼にとっての真実”である。

「安全基地」を失っていっぱいになった「心のコップ」は学校で溢れ出した。

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