自己評価はどのように形成されるか?

■ストローク理論とディスカウント
自己評価の形成にかかわる最大の要因は親子関係である。ここでは親の態度を6つの種類に分類してそれぞれが与える効果を解説する。

■6種類の親の態度
1.無条件の肯定的ストローク
2.条件付きの肯定的ストローク
3.無条件の否定的ストローク
4.条件付きの否定的ストローク
5.無条件のディスカウント
6.条件付きのディスカウント

■無条件の肯定的ストローク
「ストローク」とは、相手の存在や価値を認めて関心をもち、その意志を相手に伝えることである。「肯定的ストローク」とは、ストロークのなかでも相手に対して肯定的な意味をもつストロークを指す。

たとえば、感謝するほめる励ます愛情を伝える理解する容認する話を聞く、信頼する任せる尊敬するねぎらう助ける許す意見を取りあげる間違いを謝る挨拶するほほえむ抱きしめる一緒に遊ぶ一緒に喜ぶ物を与えるなど。

肯定的ストロークを受け取った子どもは親から認められていると感じ、心から喜びを味わうことができる。

「”無条件”の肯定的ストローク」とは、肯定的ストロークを与えるための条件を相手に課さないことである。つまり、子どもが親の期待にそわなくても、無条件に肯定的ストロークを与えることを言う。このとき、肯定的ストロークは子どもの”存在そのもの”に対して与えられる。

「無条件の肯定的ストローク」は、子どもの「自尊心」を向上させる効果を持つ。子どもは自分の行為や能力にかかわらず自分は親から無条件に人格を肯定され愛されている、という安心感を得ることができるからである。

■条件付きの肯定的ストローク
「条件付きの肯定的ストローク」とは、肯定的ストロークを与えるための条件を相手に課すことである。

たとえば、テストで良い点をとったとき試合に勝ったとき家の手伝いをしたとき勉強をしたとき親の希望する進路を選んだとき、規則を守ったときなど。

つまり、親の望む行為を子どもが達成したときにのみ、肯定的ストロークを与えるのである。このとき、肯定的ストロークは子どもの“行為”を条件として与えられる。

「条件付きの肯定的ストローク」は、子どもの「自己効力感」を向上させる効果を持つ。子どもは親からの肯定的ストロークを得るために、親の期待にそって目標を達成しようとするからである。

この経験は将来、子どもが社会に出たときに、人の役に立ち親以外の人間から『賞賛』を受けて「自己評価」を補強するための力になる。

ただし注意がある。条件付きの肯定的ストロークの場合、子どもはいい子にしていれば褒められるので、どうすればよいか悩む必要はない。しかし、失敗すれば肯定的ストロークを得られないので、心の底から安心することはできない。条件付きの肯定的ストロークに偏りすぎれば、子どもは「結果を出し続けなければ捨てられる」と思うようになり、自己評価が不安定になる。

したがって、無条件の肯定的ストロークとバランスよく組み合わせなければならない。

■無条件の否定的ストローク
「否定的ストローク」とは、相手の存在や価値を少ししか認めない、または、否定や不満のメッセージを送ることである。

たとえば、信用しない口をだしすぎる(過干渉)命令する強制する、禁止する意見する反対する非難する責める叱る注意する悪口を言う軽く叩くなど。

「否定的ストローク」は、子どもの「自尊心」や「自己効力感」を若干だが低下させる効果を持つ。ただし、長期間にわたり肯定的ストロークを少なくし、否定的ストロークを何度も与え続ければ、やがて子どもの自己評価は低く安定するだろう。

■条件付きの否定的ストローク
「条件付きの否定的ストローク」とは、相手が条件を満たさないときにのみ否定的ストロークを与えることである。たとえば、規則を守らないとき勉強をしないときテストで悪い点を取ったとき手伝いをしないとき、親の希望する進路を選択しないとき親の価値観に逆らったときなど。

つまり、親の決めた規範や価値観に子どもが合致しないとき、また、子どもの能力が親の期待した水準に届かないときに、否定的ストロークを与えるのである。

ストロークが否定的なものに偏りすぎると、子どもは失敗できないので心の底から安心することができない。

■無条件のディスカウント(ノンストローク)
「ディスカウント」とは、相手の価値や存在を認めない、気持ちを理解しない、立場を考えない、言うことを認めないということ、つまり蔑視することである。

たとえば、支配する脅迫する邪魔をする嘲笑する恥をかかせる疑いをかける侮辱陰口いじめ孤立させる村八分与えない物を取り上げる育児放棄過干渉ひっぱたく理由も聞かずに殴る家から閉め出すなど。

ディスカウントは子どもの「自尊心」を著しく低下させる効果を持つ。

■条件付きのディスカウント
「条件付きのディスカウント」とは、相手が条件を満たさないときにのみディスカウントすることである。

条件付きディスカウントは、親が子どもを支配したいときや、子どもに干渉するときに、子どもを従わせるための手段として悪用されることがある。これについては後で詳しく解説する。

■無条件のストロークは人格に対して与えられる。条件付きのストロークは行為に対して与えられる。

一見「条件付きのストローク」に見えるが、実は「無条件のストローク」になっているセリフがある。たとえば、子どもがしてはいけないことをした時に、

「まったく、そんなことをしちゃ駄目じゃないか」
「まったく、そんなことしておまえは駄目だね」

前者は「条件付きの否定的ストローク」
後者は「無条件の否定的ストローク」
である。

前者は、子どもの行為を批判しているのに対して、後者は子どもの人格を批判しているからである。

行為を批判された場合、子どもは「自分のしたことがいけなかったんだ」と思うが、人格を批判された場合、子どもは「自分という人間は駄目なんだ」と思うようになり、「自尊心」は低下する。

子どもの自己評価を高く安定させたいならば、人格に対しては無条件の肯定的ストローク、行為に対しては条件付きストロークで臨むと良い。


競争と自己評価の関係

能力に関する自己評価が大きく向上するのは、他者との競争に勝ったときです。それについてクリストフ・アンドレの「自己評価の心理学」p103から引用して説明しましょう。

---------------------引用--------------------
子どもは何を基準にして自己評価を行うのか

これまで見てきたように、両親の態度や家庭環境、友達との関係など、自己評価を決定する要因はさまざまである。そこで今度は少し角度を変えて、子どもの能力や特徴と自己評価の関係を考えてみよう。そのうえで、両親に対してささやかな助言を差し上げたい。

子どもの自己評価に関係の深い分野

子どもはさまざまな分野における自分の能力や特徴をもとに自己評価を行う。この時、自己評価の決定に特に関係の深い分野が五つある。すなわち

学業 (自分はきちんとした成績を収めているか?)

運動能力 (自分はスポーツが得意か? 走るのが速いか?)

クラスでの人気 (自分は人から好かれているか? 友達がたくさんいるか?)

社会に対する適合性 (自分は大人から信頼されているか? 社会の規則を守れるか? 礼儀正しいか?)

容姿 (自分は魅力的か?)

の五つである。

だが、それぞれの分野において、自分から見ても人から見ても優れた能力や特徴を持っていたとしても、それだけでは自己評価は上がらない。クラスで一番の成績をとっても、コンプレックスから逃れることはできないのだ。問題はただ優れているかどうかではなく、本人が重要だと思っている分野で優れているかどうかなのである。そのことは多くの研究が証明している。自己評価の高い子どもは自分が価値を置いている分野で人より優っている。逆に言えば、それ以外の分野では多少人より劣っていても、あまり気にしないのだ。
---------------------ここまで--------------------

TOP [ニート・ひきこもり・不登校(登校拒否)の原因と親]

inserted by FC2 system