■―原因編―で「自尊心」を伸ばすには<愛情の糧>が必要だと述べたが、その具体的な方法をここに解説する。内容はこちらのサイトからの引用。

◆トマス・ゴードン博士の『親業』とは?

1962年、アメリカの臨床心理学者トマス・ゴードン博士は、親のためのリーダーシップ訓練講座『親業』(PET)を提唱しました。ゴードン博士は、1990年までに数千人の親業インストラクターを育成し、全米と25の国々で100万人以上の親に『親業』を教えました。日本でも1980年から2005年までの間に11万人が『親業訓練講座』を受講しています。

その後、『親業』をもとにして『教師学訓練講座』『リーダーシップ訓練講座』『自己実現のための人間関係講座』なども提唱されました。

『親業』は対人関係全般に応用できます。上司と部下、教師と生徒、夫婦、恋人同士、友人関係、様々な人間関係の対立を解いて円滑にすることができます。

『親業』は、次の三つの柱からできています。
1.聞く技術
相手が心を開いて、本当の気持ちを自分に話すように接する。また、相手が何か問題を持って悩んでいるときに、相手が自分で解決できるように手助けする技術です。聞く技術には、「受動的な聞き方」と「能動的な聞き方」という2つの手法があります。

2.話す技術
相手に自分の気持ちを素直に伝える技術です。話す技術には、「わたしメッセージ」という手法があります。「わたしメッセージ」は自分が問題の影響を受けるときに効力を発揮します。

3.対立を解く技術
自分の欲求と相手の欲求が対立しているときに、両者が納得のいくように対立を解消する技術です。対立を解く技術には、「勝負なし法」という手法があります。

次の項目では、私たちがよく使うお決まりの12の対応について解説しましょう。

◆相手の抵抗を招く「12の対応」。

私たちは、他の人との関係において欲求や価値観が対立したときに、お決まりの12の対応のいずれかを使って相手の行動を変えようとしてしまいがちです。ですが12の対応をされた相手は防御的な反応を示し、こちらの望んだようには行動してくれません。

具体例を見てみましょう。普段、自分がどの対応を使っているか、また、過去に自分が12の対応をされたときにどう感じたかを思い出しながら読んでみてください。

(例は、『親業』関連書籍からの引用です。)
は、恋人がいかに誠実でないかをうったえてくる友人への対応です。
・b は、夫が、『あんな会社なんか嫌いだ! もう行きたくない』と言ったときの、妻の対応です。
は、宿題ができずに困っている生徒への、教師の対応です。

1.命令、指示。
a「そんなにイヤなんだったら、別れたらいいじゃない。」
b「文句ばかり言わないで、行きなさいよ!」
c「文句ばかり言ってないで、さっさとやってしまいなさい。」

2.脅迫、警告。
a「そんなんじゃ、結婚してもうまくいかないわね。」
b「行かないと、出世にひびくわよ。」
c「いい成績を取りたければ、今すぐやったほうがいいと思うよ。」

3.説教、義務付け(すべき、当然のこと、など)。
a「あなたも、もう少し、やさしくすべきじゃないかしら。」
b「会社へは行くべきよ。」
c「学校では、勉強することが仕事だと、よく知っているはずよ。個人的な問題は、家庭で解決してちょうだい。」

4.提案、助言、忠告。
a「誰かから、彼にそのことをそれとなく言ってもらうのは、どうかしら?」
b「信頼できる上司に、相談してみたらいいのに。」
c「もっと上手に時間を使えるように、計画を立てなさい。そうすれば、宿題は全部できるだろう。」

5.論理による説得。
a「でも、男性って、みんなそういうところがあるものよ。」
b「会社を嫌だと思うから嫌になるのよ。嫌なことがないように同僚や上司と仲良くすれば大丈夫よ。」
c「考えてみよう。いいかい。宿題を提出するまで、もう三、四日しかない。よく覚えておくんだね。」

6.批判、非難。
a「男性を見る眼がなかったのね。」
b「ちょっと嫌なことがあると、すぐに弱音を吐いて、いやだわ。」
c「お前はひどい怠け者だ。さもなければグズだ。」

7.悪口、侮辱、はずかしめる。
a「あなた、自分が何様だと思って、そんなあげつらうようなことを言うの?」
b「あなたは、あいかわらず、甘ったれるのね。」
c「来年は中学生だというのに、まるで小学四年生程度ね。」

8.解釈、分析。
a「あなた、自分が別れたくて、相手が悪い人だって思おうとしてるんじゃないの?」
b「人間関係が嫌だから、そんなふうに考えるんじゃないの?」
c「宿題をやらずに済ませるには、どうしたらいいのか、そればっかり考えているんだろう?」

9.同情、なぐさめ、激励。
a「心配しなくても、彼はそんなに悪い人じゃないから。」
b「あしたは、いいことがあるかもしれないよ。でも、確かにサラリーマンは退屈で、嫌なときもあるわね。わかるわ。」
c「私もあの宿題は、やさしくないと思っているわ。でも、やり始めれば、それほど難しくはないんじゃないかしら。」

10.尋問 (原因・動機・理由を探る)。
a「いつから、彼のことについて疑問を持ち始めたの?」
b「いつからそんなふうに感じているの? 嫌な上司でもいるの? 同僚とはうまくいっているの? どうして?」
c「どれだけ時間をかければできるの?」

11.賞賛、ご機嫌とり、同意。
a「あなたみたいにステキな人は、滅多にいないのに。」
b「じゃ、行かなくても、いいじゃないの。」
c「君は本当は実力がある。工夫すれば、君ならできる。」

12.ごまかし、皮肉。
a「今日は、私がご馳走するわ。食べたら少しは気が軽くなるわよ。」
b「まあ、いいじゃないの、明日になれば、気持ちもちがってるわよ。」
c「誰かさんは、今日は不機嫌らしいな。」

以上、12の対応のうち1〜5は「解決メッセージ」といい、「あなたは頭が悪くて、自分では良い解決策を考えられないだろうから、私が教えてやる」というメッセージが隠されています。

6〜10は「やっつけるメッセージ」といい、「あなたはちょっと変だ」というメッセージが隠されています。12には「それについては話したくない」というメッセージが隠されています。

これら12の対応以外に3つの攻撃行動と呼ばれるものもあります。例を見てみましょう。

(食事を拒む病人への介護者の対応)

1.無視
・「もう、どうせ食べないんだから」と冷たい視線でほうっておく。さじを投げる。
・何か頼まれても聞こえないふりをする。

2.仕返し
・言うことを聞かないのに腹を立てて、無理やり口に食べ物を押し込む。
・自分が病人の言うことを聞かない。

3.他で攻撃する、いやがらせ
・「わがままな人なのよ」と周囲の人に言いふらし、病人のせいにして、自分の介護がうまくいかないウサを晴らす。

これら12の対応や3つの攻撃行動を返された相手は次のような反応を示します。

1.これ以上話してもムダだ、と黙りこむ。
2.防御的、反抗的になる。
3.強く主張する。反駁する。
4.憤慨する。腹を立てる。イライラが増す。
5.自分はダメだ、劣っていると感じる。
6.自分は間違っている、悪い、罪深いと感じる。
7.自分をあるがままに受容されていない、と感じる。
8.あなたが自分を変えようとしている、と感じる。
9.自分の問題解決の力を、あなたが信頼していないと感じる。
10.自分の問題をあなたがとりあげてしまったと感じる。
11.自分が理解されていないと感じる。
12.自分の感情には正当な理由がない、と思わされる。
13.中断された、切り離されたと感じる。
14.誤解され、抑圧されたと感じる。
15.証言台に立たされて、反対尋問されていると感じる。
16.あなたは興味がなくて、問題から逃げたがっているのだ、と感じる。
17.子どものようにあやされている、と感じる。

相手の心は閉じてしまい、問題の解決から遠ざかります。ゴードン博士の調査では、講座に参加した親や教師の優に90%以上が12の対応を使用していたといいます。

そこで『親業』では、相手の防御を解く「受動的な聞き方」「能動的な聞き方」という二つの“聴く技術”を用います。

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