■自己評価の4つのタイプ
自己評価をはかるには、高いか低いかという基準のほかに、安定か不安定かという基準がある。そして、この二つの基準を組み合わせると、自己評価は4つのタイプに分類することができる。

1.自己評価が高く安定している(自己評価は高く、傷つきにくい)
2.自己評価が高く不安定(自己評価は高いが、傷つきやすい)
3.自己評価が低く不安定(自己評価は低いが、現状を変えたいと思っている)
4.自己評価が低く安定している(自己評価は低く、現状を変えることをあきらめている)
詳しく解説していこう。

■自己評価が高い2つのタイプ
 ◆―自己評価が高く安定

自己評価が高く安定していると、まわりの状況や出来事によってその自己評価の高さが変わることはほとんどない。したがって、このタイプの人々は自分のイメージを高めたり守ったりするのに、無駄な時間やエネルギーを使うことがない。

たとえば、いろいろな専門分野の人々が集まって共同作業をすることになったとき、まず最初にその作業の方針を決める会議が開かれたとしよう、そしてまた、その会議の席上で自分の専門分野の活動についてほかの人々に説明し、作業を効率的に進めるためにはどうすればよいか意見を言うよう求められたとしよう。そういったとき、このタイプは自分の意見を堂々と述べ、仮に反対意見があったとしても、注意深く話を聞いて、穏やかに説得しようとするだろう。その反対に、相手を攻撃して、やりこめるようなことはないはずだ。

 ◆―自己評価が高く不安定
このタイプの人々の自己評価は高いけれども傷つきやすい。日常生活の中でも、人と競争をしたり、不利な状況に置かれたりすると、その自己評価は著しく下がってしまう。そういったことから、このタイプの人々は<失敗>や<批判>に激しく反応する。少しでも失敗したり、人から批判を受けたりすると、自分が全面的に否定されたような気持ちになるのだ。また、自分に対してどこかしら不安を感じているので、自分の優れた点や過去の成功について、いつでも誰かに言っていないと気持ちが落ち着かない。

したがって、先ほどの会議の例で言えば、自己紹介の時に自分の業績を長々と自慢する傾向にある。また、その会議の席上で、自分の言ったことに反対されると、それまで自信たっぷりだったのが嘘のように落ち着かなくなり。突然怒りをあらわにして相手を攻撃しはじめる。そうして、徹底的にやりこめるのだ。

 ◆―2つのタイプの違いは逆境でわかる
こうして見ると、この2つのタイプの違いは明らかである。自己評価が高く安定している人は少々のことでは動じない。状況が自分にとって有利であろうと不利であろうと、それには関係なくいつでも高い自己評価を保っていることができる。

いっぽう自己評価が高く不安定な人は状況に左右されやすい。物事が思い通りに運ばなかったり、あるいはほんの少し人から批判されただけでも、たちまち自信をなくしたり、攻撃されたように感じるのだ。

物事がうまくいっているときには、この2つのタイプはほとんど見分けがつかない。何かに失敗したり、人から批判を受けたりなど逆境に立たされたときに、初めてその違いが表れるのである。

 ◆―2つのタイプの違いは感情にも表れる
一般に自己評価が高く安定している人は、不安定な人に比べて感情的に落ち着いている。これは少々のことでは自己評価が傷つかないため、周囲に対して心理的に身構える必要がないためである。

いっぽう自己評価が高いけれども不安定な人は、誰かに批判されるのではないか、自分の能力が正当に評価されないのではないか、と絶えず警戒している。そのため、緊張や不安、怒りや嫉妬、恨みや悲嘆など否定的な感情につきまとわれることが多い。逆に言えば、自分は優れた人間だと思っているのにそういった感情を持つことが多いようなら、その人の自己評価は高くても不安定だということになる。

 ◆―高い自己評価とは崩れやすいものなのか
自己評価が高く安定していれば、めったなことで自信を失うことがない。したがって、このタイプの自己評価を持つ人は、自分が完全に支配することのできない状況でも受け入れることができる。その状況を受け入れても、自分が劣っていると感じたり、自分の価値が下がったとは思わないからだ。

その反対に、自己評価が高いけれども不安定な人は、状況を完全に支配していないと落ち着かない。少しでも思い通りにならないことがあると、自分の価値がなくなったように感じるからだ。また、人からどう見られているかが気になるため、日常生活で起こる出来事をすぐに自分の体面と結びつけて考えてしまう。その結果、同じように高いとはいえ、自己評価は傷つきやすい。

こうして見ると自己評価が高く不安定な人は、実のところ、自分に対してもまわりの人に対しても自信があるように見せたいと思っている自己評価の低い人だと言えるかもしれない。

といっても、もちろん、自己評価が低く不安定な人とは違う。自己評価が低く不安定な人は自分には力がないと思い込んで、その点をある意味では必要以上に認めているからだ。それとは反対に、自己評価が高く不安定な人は、自分では認めたくない自分自身の弱いイメージといつも戦っているのである。

2つのタイプの違いをまとめてみよう。
(自己評価が高く安定)
・日常生活のなかで自己評価が変わることは少ない。
・自己評価を維持するのにエネルギーを必要としない。
・あまり大きなものでなければ、失敗を正当化したり、批判から身を守るのにそれほどエネルギーを必要としない。
・批判を冷静に受け止める。
<成功に対する反応>「私は満足している。うまくいって嬉しい」
<ほめ言葉に対する反応>「どうもありがとう」
<失敗に対する反応>「今度はうまくいかなかったな」
<批判に対する反応>「そうですか・・・。でも、どうしてまた、そんなことを?」

(自己評価が高く不安定)
・日常生活のなかでも状況によって自己評価が変わることがある。
・自己評価を維持するのに大きなエネルギーを必要とする。
・ほんの些細なものでも、失敗を正当化したり、批判から身を守るのに大きなエネルギーを必要とする。
・批判に対して感情的になる。
<成功に対する反応>「成功するって言っただろう。でも、これくらいじゃまだ終わらない。それにしても、失敗すると言った奴らの顔が見たいよ」
<ほめ言葉に対する反応>「まだまだ、こんなもんじゃない」
<失敗に対する反応>「私が失敗したって? だいたい、あなたに何がわかると言うんです?」
<批判に対する反応>「そう言うあなたはどうなんです?」

 ◆―違いが生まれる原因
同じように自己評価が高くても、<安定>と<不安定>ではずいぶん違う。では、その違いはどうして生まれるのだろう? その答えの一つは両親の養育態度にも求められる。

まずは<不安定>の場合。
・子どもに対する両親の評価と実際の子どもの能力との間に差がありすぎる場合。たとえば、両親は「おまえは何をやってもいちばんだ」と言うのに、学校の成績やクラスでの人気から見て、子どものほうにはそうでないことがよくわかっている場合。こういった状況に置かれると、子どもの自己評価は高く不安定になりやすい。

・両親が自分たちの仕事に夢中で、子どもの面倒を見ない場合。こういった環境で育つと、子どものほうは長身の注意を惹きつけるために、自分にはそれだけの価値があることを示す必要が出てくる。そのため、実際以上に自分をよく見せようとするので、自己評価は高く不安定になりやすい。

・両親のほうも自己評価が高く不安定な場合。親をモデルにして育つので、子どももそうなりやすい。

・両親が子どもの能力にしか関心を示さない場合。子どもはがんばって能力を高めるので自己評価は高くなる。だが、失敗が許されないので不安定になりやすい。

次は<安定>の場合
・両親が子どもの現実の能力や可能性を見て、子どもを評価している場合。すなわち、子どもに対する両親の評価と子どもの実際の能力に差がない場合。こういった状態であれば、子どもは安心して能力を伸ばすことができるので、自己評価は高く安定する。

・両親がいつでもそばにいるので、子どもが両親の注意を惹くのにそれほど苦労しなくてすむ場合。子どもは実際以上に自分をよく見せようとしなくてもいいので、自己評価は安定する。

・両親のほうも自己評価が高く安定している場合。こういった両親のもとで育つと、子どもは人から批判されたとき、どのように冷静の答えればよいか、まぢかに見る機会が多くなる。また、ことさら自分の優れた点を吹聴しなくても、人から評価されるにはどうすればよいか、両親のやり方を見て実際に学ぶことができる。そういったことの結果、自己評価は自然に高く安定する。

■自己評価が低い2つのタイプ
今度は自己評価が低いタイプについて。こちらも<安定>か<不安定>かでさまざまな違いが出てくる。

 ◆―自己評価が低く不安定

このタイプの自己評価はともかくまわりの出来事に影響されやすい。たとえば、何かに成功したり、嬉しいことがあったりすると、普段より自己評価が高くなる。だが、その状態はいつまでも続かず、少しでもうまくいかないことがあると、またすぐに元に戻ってしまう。一般にこのタイプの人々は自分でも自信を持ちたいと思っているし、ほかの人にもいいところを見せたいと思っている。だが、普段はあまり自信を持つことができないので、なかなか積極的になれない。

さきほどの会議の例で言えば、自分のことは控えめに話し、それ以外のことでもあまり発言しないタイプだ。仮に自分の意見を言う場合でも、まわりの反応をうかがいながら、慎重に発言する。また、誰かから反対意見があがると、たちまち動揺し、反論もあまりしない傾向にある。その反対に人から受け入れられたと感じると、気持ちに余裕ができて、積極的に自分の意見を述べることができる。

 ◆―自己評価が低く安定
このタイプの自己評価はまわりの出来事によって左右されることはない。すなわち、いつでも低く安定し、何かいいことがあっても高まることがないのだ。一般にこのタイプに属する人々は自己評価を高めようという努力をしない。現状を受け入れ、今の低いレベルを甘受している。

先ほどからの会議の例で言えば、出席していたことも気づかれないようなタイプである。したがって、自分の意見を述べることはまったくなく、まわりの人に促されてようやく口を開いたかと思っても、前に誰かが言った意見をなぞることが多い。そこで、「もっと詳しく説明してください」とほかの出席者から求められたりすると、まるで拷問にかけられたような顔をする。また、そういった場合にかろうじでひきずりだされた意見は、何かをすることに対して消極的なものが多い。

 ◆―2つのタイプの違い―現状を変えたいという気持ち
さきほども少し述べたように、自己評価が低く不安定な人はもっと高い自己評価を持ちたいと思っている。したがって、このタイプの人々は現状を変えようと行動する。いっぽう自己評価が低く安定している人は、現状を変えることをあきらめているように見える。すなわち、自分に対してもまわりの人間に対しても、自分をよく見せようという努力をしないのだ。

また、この2つの違いは<失敗>や<批判>に対する態度にも表れる。自己評価が低く不安定な人は失敗をしたり、人から批判されることを恐れる。いっぽう自己評価が低く安定している人は、「失敗するに決まっている」、「絶対に人から批判される」と最初から決めているのである。

 ◆―2つのタイプの違い―人から認められたいという気持ち
自己評価が低く不安定な人は、人から認められたいという気持ちも強い。人から認められると嬉しくてたまらなくなるし、その反対の場合は心底がっかりする。といっても、感情をあまり表に表さないほうなので、外から見ただけではわかりにくい。実際、このタイプの人々は何か嬉しいことがあっても喜びを控えめにし、悲しいことがあると心のなかに抑えつけてしまうのだ。

いっぽう自己評価が低く安定している人は、この点についてもあきらめているようなところがある。どうせ自分は何をやってもうまくいかないと思っているのだ。

2つのタイプの違いをまとめよう。
(自己評価が低く安定)
・日常生活のなかで自己評価が変わることは少ない。
・悲しみなどの否定的な感情に支配されていることが多い。
・自己評価を高めるための努力をしない。
・成功や失敗に感情が揺り動かされる。しかし、だからといって、それが行動に結びつくわけではない。
・個人的な利益は最初から追求するだけ無駄だとあきらめている。
<成功に対する反応>(言葉を失い、1週間後には病気で寝込んでしまう)
<ほめ言葉に対する反応>「やめてください。そんな話は聞きたくありません」
<失敗に対する反応>「私は駄目な人間です。そんなことも知らなかったんですか?」
<批判に対する反応>「そのとおり、いえ、あなたがおっしゃったより、もっと悪いです」

(自己評価が低く不安定)
・場合によっては高くなることもある。
・否定的な感情と肯定的な感情が交錯している。
・自己評価を高めるための努力をする。
・成功や失敗に感情が揺り動かされる。その結果、成功を維持したり、あるいは今度は失敗しないように行動する。
・個人的な利益よりも社会の利益を大切にするところがある。
<成功に対する反応>「本当にうまくできるだけの能力が身についたのでしょうか?」
<ほめ言葉に対する反応>「いえ、私なんか何もしてません」
<失敗に対する反応>「準備が足りませんでした。私がいけなかったのです。」
<批判に対する反応>「やっぱりそう思いますか?」

 ◆―違いの生まれる原因
自己評価が高くなる場合と同じように、自己評価が低くなる場合も、そこには両親の養育態度が大きく影響している。だが、自己評価が高い場合とは違って、<安定>になるか<不安定>になるかについては、その原因にあまり大きな違いはない。

まずは、<不安定>の場合
・子どもに対して本当に愛情を感じていたとしても、子どもを慰めたり、励ましたりすることが不足している場合。
・両親が過保護(過干渉)で子どもの自主性を認めない。たとえば、母親が子どもに対して「おまえは大きな赤ん坊だ。私がいなければなんにもできないだろう」などと言う場合。
・両親の養育態度のほかに学校での経験も自己評価に影響する。たとえば、子どもの能力が低い、あるいは、ほかの子どもに人気がない場合。

次は<安定>の場合
・最初に述べたように、<安定>になるか<不安定>になるかについては、その原因にあまり大きな違いはない。全体としては<不安定>の場合の強度が強まっただけと考えていただければよい。といっても、いくつかはっきりした違いもある。
・両親の一人が亡くなったり、あるいは鬱病になったりなど、子どもが生活の環境に対して無力感を感じるような出来事が起こった場合。そういった場合、子どもの自己評価は低く安定しやすくなる。
・両親からの愛情が著しく欠如した場合。この場合、自己評価は低く安定する。また、それだけではなく、ほかの精神障害をともなうことも多い(これについてはまたあとで述べることにする)。

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