責任逃れをする毒親
子どもに依存する毒親

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ダン・ニューハース『不幸にする親 』より

〈その8〉責任を果たせない親

 虐待をする親が虐待を続けられる理由のひとつに、パートナー(妻や夫)がそれを止めないということがあります。これはちょうど、アルコール依存症の人の妻や夫が自分もアルコール依存症だったり、自分は飲まなくても相手の大量飲酒に協力している共依存(訳注*)者だったりするのと似ています。虐待を止めないで手をこまねいているほうの親は、一人の人間としても子どもの親としてもすべきことができない、影のような存在です。彼らには次のような特徴があります。

・子どもに罪悪感や同情心を起こさせることによってコントロールする。

・子どもの世話をするのでなく子どもに世話をしてもらおうとする。

・完全主義者やカルト的または虐待的な相手と結婚していることが多い。

・配偶者のコントロールから子どもや自分を守るために立ち上がることができない。

・強い感情がわいたり、新しい状況が起きることを恐れている。 

その結果、子どもには次のようなことが起きる可能性があります。
・気持ちを楽に暮らせる機会がほとんどない。

・消極的で人にゆずってばかりいる。

・怒りや嫌悪感をうまく表現できない。

  大人に成長できていない

 このタイプの親は、しっかりした独立心がなく、いわば大人に成長できていない親だともいえます。彼らは臆病なうえ、いつも助けを必要としており、子どもじみたことをして子どもに世話をやいてもらおうとすることさえあります。これは心理学でいう「役割の逆転」で、子どもから楽しい子ども時代を奪ってしまうものです。

 こういう親は、一見、「コントロールばかりする親」には見えないかもしれませんが、彼らは自分で直接手を下すことはなくても、心の不健康な家庭を作り出す重要な役を演じているのです。

 彼らは、完全主義者やカルト的、あるいは虐待的な相手と結婚していることがよくありますが、それはそういう相手と一緒にいると安心感を持てたり、自分が強くなったように感じられるからです。しかしその結果、相手の支配に服従し、皮肉にも自分が虐待の被害を受けることもあります。

 片方の親が虐待し、もう片方がこのような親では、子どもはどちらの親からもポジティブな言葉を聞くことができません。精神的に必要なものが奪われて、心の傷はいっそう深まります。さらに、こういう親のなかには、自分が配偶者から虐待されないように子どもを盾に使ったり、子どもから同情や哀れみを引きだそうとする者さえいます。さらには、責任を逃れようとして、「私は具合が悪いのよ」「不安なの」「うつがひどくて」などと子どもに言いわけを言う者もいます。 看護師をしているある女性が、次のような話をしてくれました。

 「私か看護師という職業についた潜在的な理由は、母親にあったのかもしれない。父は独裁者のような男で、妻や子どもにあらゆることを命令した。私と弟は、そのような父と“何もできない母”という家庭で育った。

 母はうつと不安感が強く、よく精神安定剤を飲んでいた。父が子どもたちをあざけったり怒りを爆発させたりし始めると、母はその場に子どもたちを置いたままいなくなってしまった。母は外部の人間、たとえばバスの運転手とか商店の人などにも、自分の考えをはっきり述べることができないように見えた。きっと自分の面倒も充分に見られない女だったのだと思う。

 私は小さな時からそういう母を手伝った。自分のことを後まわしにして母の世話をしたこともあった。そしてそれは私のパターンになった。私は子どもの時からいつも人につくしてばかりいて、自分は報われない人生を生きてきた。そのパターンは恋愛をしても同じだったし、結婚しても変わらなかった。職場でも、よく仕事を押しつけられて一手に引き受けてしまい、がんばりすぎて“燃えつき症候群”になってしまうことがある」

 彼女の母親がそのような人間になったのには、生い立ちなどの複雑な事情があったのかもしれませんし、同情すべきことには違いありません。しかし、そのために娘がどれほど苦労したかという事実は直視しなければなりません。

  自分の子どもを守れない親

 もちろん、虐待的あるいは独裁的な親の配偶者はみな「責任を果たせない親」だということではありません。けれどもまともな親なら、もし配偶者が子どもに虐待的になったら止めようとするはずです。たとえその結果、自分に被害が及んだとしても、少なくとも配偶者の虐待をやめさせようと努力するのが責任ある親の姿のはずです。また、虐待をやめさせることができなくても、子どもを連れて家を出ることもできるかもしれません。

 事情があり子どもを連れて家を出ることができない場合でも、少なくとも「夫(妻)のしていることは間違っている」と子どもに伝えることはできるでしょう。子どもに「あなたは悪くない」「あなたを傷つけるのは間違っている」「悪いのはあなたではなくお父さん(お母さん)のほうだ」と教えるだけでも、子どもには大きな違いをもたらします。

 ところが「責任を果たせない親」は、そのどれをすることもできません。なかには子どもを虐待している夫(妻)に同調していて自分では手を出さないだけという妻(夫)もいます。または夫(妻)の虐待を正当化して子どもに言いわけを言う妻(夫)もいます。さらに、ただ手をこまねいて見ている、あるいは見ないフリをしている、あるいは今の例のように子どもを置き去りにしていなくなってしまう親もいます。

 こういう親の罪は非難されるべきですが、そのことが理解されにくいのは、直接虐待している親のほうに非難や怒りを向けるほうがたやすいからです。虐待された当の子どもにしても、大人になってから子ども時代を振り返った時、自分を守ってくれなかった親に怒りを感じることがあっても、すぐその後には怒りを抱いたことに罪悪感を覚えるといいます。こういう親はたいそう非力に見え、だれでも哀れみを覚えてしまうのが普通だからです。「何もできなかった親に同情する」ことと、「その親に能力がなかったために自分が苦しんだ」という事実との間にバランスを取るのは、とても難しいことです。

 次は35歳の営業マンです。

 「私は子ども時代、何かというと父にぶたれていた。だが母に慰めてもらおうとしても、母はきまって『お父さんは仕事でストレスがたまっているのよ。あなたにどうすればいいのかをよくわからせようとしているだけなのよ』と言うばかりだった。

 子どもながら、私には母が父を止めてくれないことはわかっていた。だが同時に、母にはそうしないでほしいという気持ちもあった。そんなことをすれば父の攻撃のほこ先は母に向き、母が傷つくことになるのは明らかだったからだ。それでもし母が家を出て行きでもしたら、私は唯一の味方を失ってしまうことになる。こうして私は、自分を守ってくれるはずの人を守ることになった」

 虐待する親のいる家の子どもにとって、家族の真実を口外するのは恐ろしいことです。その真実とは、「うちの親は子どもを虐待している」ということ、そして「虐待は間違っている」ということです。「責任を果たせない親」は、子どもを虐待している配偶者と対決状態になるのを避けるため、虐待者のために子どもに言いわけを言い、子どももある種の”生命線”を維持するためにその言いわけを受け入れます。この例のように、その。生命線”がいかに頼りにならないものであっても。

  親が払う代償

 この章では、有害な親のコントロールを8つのタイプに分けて説明しましたが、実際には一人の親のなかにいくつかの要素が複合的に組み合わされています。あなたも自分の体験をこれらのパターンにあてはめてみれば、幼かった頃の家の雰囲気がよりはっきりと見えてくるかもしれません。

 親の不健康なコントロールのタイプを見分けることにより、「心のなかに住む親」の姿もまたよく見えてきます。あなたが人と接する時の態度には、これらの8つのパターンのどれとどれが姿を表しているでしょうか。認めたくないことではあっても、親のどんなパターンが自分のなかにも見られるかを認識することは、幼い頃に心のなかに埋め込まれた地雷を取り除く助けになります。

 コントロールばかりする親の行動にははっきりした動機があり、彼らはそうすることで心理的な何かを得ようとしているのですが、同時に彼らは、知らぬうちに自分も代償を払うことになります。この章の最後に、それについてつけ加えておきましょう。彼らが払う代償とは次のようなものです。

・「かまいすぎて子どもを窒息させる親」は、子どもに密着することで孤独を紛らわせることができるかもしれないが、情緒的な崩壊の一歩手前にいる。

・「子どもの幸せを取り上げる親」は、「条件つきの愛」を使って子どもの心を操っているが、冷たさを保つことでかろうじて生きている。

・「完全主義者の親」は、優越性を追求することで自分の欠点を隠すことができるかもしれないが、人のあら探しが止められず、永遠に満たされることがない。

・「カルトのような親」は、自分は絶対に正しいと宣言することで疑念や不承認を逃れようとするが、本当はそうでないことがわかってしまうのではないかといつも恐れている。

・「支離滅裂な親」は、しょっちゅう豹変することで人をまごつかせることができるかもしれないが、安定した安心感のない人生から逃れることができない。

・「常に自分の都合が優先する親」は、そうやって心の空しさから逃れようとするが、どんなに利己的に行動したところで、心の空しさを埋めることはできない。

・「身体的な虐待をする親」は、自分で処理することのできない強い感情を、子どもを攻撃することによって一時的に解き放とうとするが、それで噴火し続ける怒りと罪の火山が静まることはない。

・「責任を果たせない親」は、自分に期待させないことで責任や要求から逃れようとするが、いつも縮こまって生きている。


引用おしまい。

続いて他の毒になる親の事例を見ていくことができますが、ここから先は過去に当事者の子供であった人にとっては、読むことにより当時の記憶や感情が蘇り、精神が不安定になることがあります。充分にご注意ください。

 毒親による有害なコントロール
 毒親チェックリスト
 毒親に責任はあるか?
 心が健康な親VSコントロールばかりする親
 親に対する「罪悪感」と「真実」
 過干渉・過保護型の毒親
 愛情を与えない毒親
 完全主義者の毒親
 カルトのような毒親・軍人のような毒親
 言動が支離滅裂な毒親
 ナルシシストの毒親・勝ち負けにこだわる毒親
 虐待・体罰を加える毒親
 責任逃れをする毒親・子どもに依存する毒親
 侮辱的な言葉で自尊心を攻撃する毒親
 性的虐待、体罰、言葉による暴力で脳が萎縮


スーザン・フォワードの著書「毒になる親」の13章には親と対決する方法が載っています。親に直接会うか、手紙を書いて、親が過去にしたことと、それが自分に与えた影響を洗いざらい話し、トラウマを原因となった親に返すのです。

もしあなたが、それをやるつもりであるならば、「毒になる親」と合わせて「論理的思考力とは? 論理的な討論・議論・ディベート・ディスカッション」というサイトを読むことをオススメします。頭のなかを整理するのに役立つはずです。


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