親に対する「罪悪感」と「真実」

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ダン・ニューハース『不幸にする親 』より

  家族への忠誠心を見直す 

この本を読み進むにつれ、「親や家族を非難するなんて、許されないことではないか」と感じる読者もいるかもしれません。それは家族に対する忠誠心からくるもので、だれにでもある心理です。もしあなたが居心地悪く感じても、それはまったくノーマルです。

 コントロールばかりされて育った過去からの癒しは、たやすくはありません。親や自分の問題点をはっきり認めるのは、気分のよいことではないでしょう。まして、「もし親がああでなければ、私はもっと幸せに育つことができたかもしれない」とか「人ともっとよい関係が持てて、抱える問題もずっと少なくてすんだかもしれない」と結論しなくてはならない人は、大きな苦痛を味わうでしょう。親との関係はどんな人間関係より複雑であり、たくさんの感情が交錯するからです。

 私たちの脳には、言葉をしゃべれるようになるずっと以前に、親との「結びつき」と親からの「禁止」がインストールされます。何年もたってから「私は親からどんな育てられ方をしたのだろう」と考えても、なかなかわからないことが多いのはそのためです。この、親との「結びつき」と、親からの「禁止」は、「事実の否定」を生む原因となることがあります。 (訳注‥「事実の否定」=苦しみをもたらす事実や耐えがたい記憶を否定することによって、苦しみや不安から逃れようとすること。心理学では単に「否定」とか「否認」といいますが、本書ではわかりやすく「事実の否定」としてあります)

 したがって、「過去の苦痛」と「現在の問題」とのつながりを調べる時は、家族への忠誠心のために事実を否定しようとする気持ちを打ち破らねばなりません。その過程では、「悲しみ」「怒り」「親を裏切っている気分」「発奮」「孤独」「自由」の感情が、順にわくでしょう。

 思春期の最も重要な仕事は、親から精神的に分離し、自分自身のアイデンティティーの確立を求めて自立への道を歩み始めることです。ところが不健康なコントロールばかりする親のもとでは、この重要な心の分離ができません。それは親がきつく握ったくびきを離そうとしなかったり、過剰なプレッシャーをかけ続けるためです。そのため、コントロールばかりする親のいる家に育った10代の若者の多くは、反抗したり、過度に家に忠実だったり、考えや気持ちが混乱していたり、恐れたりしているのです。けれども20代、30代、そして中年へとなるにしたがい、分離・独立はそれなりに、より深いレベルで進んでいくことになります。

 そういうわけで、この本を読み進んでいくと、「親を責めてはいけない」とか「すべてはもう過去のことだ」などの考えが心のなかをよぎる人も多いかもしれませんが、それはあなた自身の考えではなく、心のなかに内面化された親の声かもしれません。静かに観察すれば、過去から響いてくる声が、現在のあなたの行動をいかに支配しているかがわかるでしょう。

 もし、「おまえは間違っている」「いや私は間違ってはいない」という相反する考えが葛藤を始めたら、あなたは間違ったことを考えているのではなく、前進しているのだと知ってください。心にうかぶ考えと、実際の親との関係との矛盾を深く探索することにより、あなたは自分がどのように育ったかを深く理解することになるでしょう。その時、あなたは不健康で過剰な親のコントロールから自分を解放しつつあるのです。

  「無実の罪悪感」を引き起こす思い

 コントロールばかりする親のもとで育った人は、精神的に自立しようとするたびに、いくつかの心配が生じるのが普通です。それらの思いは親に対する忠誠心からくるもので、「無実の罪悪感」を引き起こすもとになります。

 次に、最もよくある例を10種類あげてみましょう。この段階をすでに克服している人は、ここは読み飛ばしてくださってかまいませんが、後で悩むことがあったらいつでもこのページに戻ってください。

〈思いその1〉
   私は親にたくさん借りがある。彼らは自分のことをさんざん犠牲にして私を育ててくれた。
〈真実〉
   「親のやり方には不健康で有害な点がたくさんあった」という事実を直視することは、けっして親に対する裏切りではありませんし、それで彼らがしてくれたことの価値をおとしめるわけ  ではありません。事実を直視するということは、自分にウソをつかないということです。自分にとって非常に重要な問題について、正直な問いかけをすることが、相手に対する侮辱になるということはまったくありません。自分の過去や親について、よい面も悪い而もともに見られるようになることが大切です。

〈思いその2〉
   自分の過去を深く探れば、「怒り」「心の痛み」「恐れ」「嘆き」などの強い感情がわき起こりそうなので不安だ。
〈真実〉
   もしつらければ、無理して過去を掘り返す必要はありません。つらい子ども時代を送った人にとって、過去を振り返るのは大変に苦しいことです。でも、もしその苦しみを乗り越えれば、あなたは自分を解き放つことができます。過去の体験を振り返って深く掘り下げていくと、非常に強い感情がわき起こることがありますが、それは子どもの時にははっきり感じることができなかった強い感情を、大人の感覚で生々しく感じるからです。けれども、もしあなたが自己の独立を願うなら、心のなかにある「怒り」「悲しみ」「痛み」「淋しさ」「孤独」「不安」などの感情をしっかり見つめることがどうしても必要になります。自分の感情を見つめ、理解することにより、私たちは感情的に強い人間になることができるのです。

〈思いその3〉
   すべてはもう過去のことだ。今さら蒸し返したところでなんになる。
〈真実〉
   子ども時代のつらかった出来事について深く考え始めると、はじめはますますつらくなりますが、それは現在や未来をもっと建設的なものにしていくための過程です。多くの人は、自分が親にどれほど影響されているかについてあまりよく考えません。たとえば、いつも親にけなされてばかりいた人にとっては、たとえ親は意図的に子どもを傷つけようとしたのではなかったとしても、そのために自分がどれほど傷ついたかを認めるのはとてもつらいことです。だから考えたくないのです。意識しようがしまいが、子どもには「親に受け入れてもらいたい」という気持ちがあります。ですから「私は受け入れてもらえない」「親は理解してくれない」と感じている子どもは深く傷ついています。

その子どもは、自分のニーズや弱さを隠してまで必死になって受け入れてもらおうとしたのに、それでも受け入れられなかったのかもしれません。「親が自分を傷つけるのを止めることができなかった自分」がいかに非力な存在だったかを理解すれば、さらに大きな悲嘆を味わうでしょう。「子どもの時、私はあの親に依存し、自分の力ではそれをどうすることもできなかった」と認めるのには苦痛がともないます。「私の親は、自分の子どもを育てるという、人生でいちばん重要であるはずのことをうまくできなかったのだ」と認めるのには勇気がいります。そのため、多くの人は傷つきたくないがために真実から目をそらし、理由をつけて。正当化しようとします。親の問題は、目をそらしたり、ことさら小さく考えたり、逆に実際より悪く考えることなく、バランスの取れた見方をすることが大切です。

〈思いその4〉
   そんなことをしているうちに親が死んだら、罪悪感に苦しめられる。
〈真実〉
   だれにとっても、親が年老いていき、亡くなるのを見るのはつらいものです。もしその親がずっとあなたをコントロールしていたり、虐待する親だったとしたら、ひとしお複雑な気持ちにさせられることでしょう。ひと言言いたかったことが言えないままだったり、わだかまりを解消しないまま、あるいは和解することなく逝ってしまわれたら、なんともいいようのない気分になるかもしれません。

けれども、親にかぎらず、だれかが亡くなるまでにその人との関係がすべて“完結”している人というのはほとんどいません。たとえ亡くなった後でも、手紙や詩を書いて呼びかけたり、瞑想したりすることで、言いたかったことを表現して心の平安を得ることはできます。詳しくは〈パート3〉の「問題を解決しよう」をお読みください。

〈思いその5〉
   私の場合はそんなにひどくはなかった。もっとひどい思いをしている子どもはたくさんいる。
〈真実〉
   そのように考える人はたくさんいます。ある40歳の女性はこう言いました。

 「私の親は暴力を振るったことは一度もなかったし、食事も作ってくれたし、学校にも行かせてくれました。性的なことをされたわけでもありません。もっとひどい虐待をされている子どももたくさんいることを思えば、あまり文句は言えないと思います」

しかしそれにもかかわらず、その女性は両親から深い心の傷を負わされていました。精神的な虐待による苦しみは、身体的虐待に劣らず深く。また長期的な影響を及ぼします。実際、身体的な虐待を受けた人の多くが、「いちばん傷ついたのは暴力ではなく、ひどい言葉を浴びせられたことだった」と言っています。もちろん、重傷を負わされたり殺されたりするような極度の虐待は例外としても、親の冷たい言葉や表情、仕打ちなどから受ける心の傷は、体の傷に劣らない苦痛を与えます。「体の傷は時間がたてば治るけど、心の傷は治らない」と言った人もいます。

身体的虐待や性的虐待にかぎらず、不健康で過剰な心理的コントロール、ネグレクト(親としての責任の放棄)、残酷な言葉や仕打ちなどの精神的虐待は、すべて子どもに大きな苦しみをもたらし、大人になった後も長期にわたって影響が消えません。

〈思いその6〉
   私は“被害者づら”をしたくない。自分の問題を他人のせいにはしたくない。
〈真実〉
   まれに、「心理学者やセラピストは、自分の問題を他人のせいにして泣き言をいっている連中の肩を持ってばかりいる」と批判する人がいます。確かに、被害者であることばかり主張して、自分は何も努力しない人がいるのは事実でしょう。しかし心理セラピストとしての私の体験では、セラピーを受けにきたり、セラピストの本を読んでいる人のほとんどは、自分を改善したいという強い気持ちを持っています。

親からコントロールばかりされて育った子どもは、自分を守ることを教わったことがなく、むしろ親のためになるように仕込まれていることが多いのです。はじめは抵抗があるかもしれませんが、自分の親の育て方に疑問を投げかけ、現在抱えている問題と子どもの時の育てられ方にはどのような関連性があるかをよく考えることは、自分自身にとって大事なことです。たとえあなたの親があなたを愛していたとしても、もし不健康なコントロールによってあなたに大きな苦痛を強いてきたという事実があるなら、その事実を認識することは非常に大切です。それは親の過ちをあげつらうためではなく、親の過ちをよく理解し、その過ちのためにもう苦しまないようになるためです。

〈思いその7〉
   親はよかれと思ってそうしたのだから、もう許して忘れるべきだ。
〈真実〉
   多くの場合、親に悪意はなかったのかもしれません。子どものためによかれと思ってそうしたというケースもあるでしょう。しかし、「だから子どものためによかったのだ」とは言えません。子どもが実際に耐えがたい苦痛を強いられたのであれば、悪意があったかなかったかは問題の本質ではないのです。もちろん、仕返しをしようなどと考えるべきではありませんが、心の底から許せる気持ちになってもいないのに、自分を傷つけた人間を無理に許そうとしてもよい結果は得られません。この問題についても〈パート3〉で詳しく扱います。

〈思いその8〉
   子どもの時に起きたことはあまり細かく覚えていない。どうすれば自分が不健康なコントロールをされて育ったとわかるのか。
〈真実〉
   あなたが癒さなくてはならないのは、個々の出来事の思い出についてではありません。癒しが必要なのは、子どもから大人になるまでの長い年月を不健康なコントロールのもとに育ったという、情緒的・感情的な体験と、そのために気づかぬうちに大人の人生にまで持ち込んだ「ものの考え方」についてです。

 不健康なコントロールをする親の、強力で目に見えない“禁止命令”は、しばしば子どもが大人になってから過去をありのままに振り返って見ることをブロックします。このままこの本を引き続きお読みになり、理解を深めてください。

〈思いその9〉
   子ども時代に親のコントロールがどうだったかなどと考えていれば、親兄弟や友人から笑われる。
〈真実〉
   そういう心配をすること自体、他人がどう思うかを基準にして生きていることを示しています。それでは、「人が賛同してくれないかもしれない」という考えが、あなたの行動をやめさせる力を持っているということになります。

 世の中には、あなたのすることをよく思わない人はもちろんいるでしょう。けれども、たとえ他の人が賛成してくれなくても、自分の身に起きたことの真実を追究するのは、独立した自己を確立するうえでとても重要です。もし、あなたが自分にとって最も大切なことをしようとしているのに親兄弟や友人が攻撃したとしたら、それらの人たちとはいったいどういう人たちなのでしょうか。自分の過去を調べるのは非常に個人的なことです。過去の束縛から自分を解放し、親との関係に新しい自由を確立することは、彼らにはひと言も言わなくてもできることです。

〈思いその10〉
   私はもう長いことずっとこうだったのだから、今さら変わろうとしたところで変われるとは思えない。私の親も変わることは永久にないだろう。
〈真実〉
   その考え方は、「すべてかゼロか」「白か黒か」という完全主義的な考え方で、不健康なコントロールをする親のいる家にはよく見られるものです。確かに、自分を変えるのはたやすいことではありませんし、時間がかかるでしょう。でも、完全に変わらなければ意味がないということではありません。少し変わっただけでも大変な進歩です。

 また、あなたの親は永久に変わらないかもしれませんが、あなたが自分を癒して本来の姿を回復できるかどうかは、彼らが変わるか変わらないかとは無関係です。あなたにとっての癒しは、親が変わるか変わらないかではなく、あなた自身が何をするかによって決まるのです。たとえごくわずかな変化であっても、あなたの感覚、行動、人間関係などが変わってくれば、将来大きな改善が起こり得ます。


引用おしまい。

続いて毒になる親の具体例などを見ていくことができますが、ここから先は過去に当事者の子供であった人にとっては、読むことにより当時の記憶や感情が蘇り、精神が不安定になることがあります。充分にご注意ください。

 毒親による有害なコントロール
 毒親チェックリスト
 毒親に責任はあるか?
 心が健康な親VSコントロールばかりする親
 親に対する「罪悪感」と「真実」
 過干渉・過保護型の毒親
 愛情を与えない毒親
 完全主義者の毒親
 カルトのような毒親・軍人のような毒親
 言動が支離滅裂な毒親
 ナルシシストの毒親・勝ち負けにこだわる毒親
 虐待・体罰を加える毒親
 責任逃れをする毒親・子どもに依存する毒親
 侮辱的な言葉で自尊心を攻撃する毒親
 性的虐待、体罰、言葉による暴力で脳が萎縮


スーザン・フォワードの著書「毒になる親」の13章には親と対決する方法が載っています。親に直接会うか、手紙を書いて、親が過去にしたことと、それが自分に与えた影響を洗いざらい話し、トラウマを原因となった親に返すのです。

もしあなたが、それをやるつもりであるならば、「毒になる親」と合わせて「論理的思考力とは? 論理的な討論・議論・ディベート・ディスカッション」というサイトを読むことをオススメします。頭のなかを整理するのに役立つはずです。


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