心が健康な親VSコントロールばかりする親

------------------------------------------------------------------
ダン・ニューハース『不幸にする親 』より

  両者の主な違い

 精神的に健康な子育てとはいったい何でしょうか。その答えはいたって簡単です。一生懸命育て、あとは自由にさせてあげればよいのです。では健全な子どもとはどんな子どもでしょう。これも簡単です。よく遊び、よく学び、成長し、家を出て独立し、自分の道を歩くことができるようになる子どもです。しかし、これらは簡単ではあっても、実行するのは容易ではありません。

 では「心が健康な親の家庭」と「心が不健康な親の家庭」のおもな違いは何でしょうか。前者は子どもが一人の人権を持った人間として育つことができる家であるのに対し、後者は親がコントロールばかりして子どもの人権を侵害し、心を蹂躙するということです。

 コントロールしてばかりいる親は、子どもの心をはぐくむどころか、楽しく遊ぶ時間さえ奪ってしまいます。そういう親は、不健康な心を持つ人間のモデルになるばかりでなく、子どもが一人の個人であろうとする努力をくじいてしまいます。コントロールばかりする親に育てられた人が、30代や40代、なかには50代になってもなお、親との感情的なもつれ合いから離れられないことが多いのはそのためです。次に、心が健康な親と、心が不健康でコントロールばかりする親のおもな違いを、表に示してみましょう。

心が健康な親の態度 コントロールばかりする親の態度
①子どもの心をはぐくむ愛情を示す

・子どもに与える愛情はほぼ一定で安定している。

・子どもは親の愛情、注目、温かい肌の触れあいを得ることができる。

・子どもは親から望まれて生まれてきたのであり、愛されていると親から聞かされている。

①子どもに与える愛情には条件がついている

・愛情は、子どもが親を喜ばせることをした時だけほうびとして与え、親が気に入らなければ、罰として愛情を与えない。

・子どもは親に恩があり、親に借りがある。

・子どもは親を満足させることによって親の愛情を”獲得”しなければならない。

②子どもの人間性を尊重する

・子どもはそれぞれ個性のある個人として扱われ、価値を認められる。

・子どもは自分の意思で年相応に自分の行動を選択できる。

②子どもの人間性を尊重しない

・子どもは親の“所有物”として扱われる。

・親は自分の精神的なニーズを満足させるために子どもを使う。

③親子の間に自由でオープンなコミュニケーションがある

・子どもは建て前を述べるより自分の考えを自由に表現したほうが価値を認められる。

・子どもは質問したり異議を唱えることが許される。

・家に何か問題がある時にはそのことが認識され、話題にされる。

③親子の間にコミュニケーションがない

・子どもの発言は押さえつけられる。「いちいち理由を訊くんじゃない」「口答えするんじゃない」などが常套句。

・子どもの質問や異議はたいてい拒否される。

・家に問題があっても無視されたり、問題があること自体が否定される。

④子どもは感情を持つ自由がある

・悲しみ、恐れ、怒り、喜び、などの感情を感じるのはノーマルなことだ。

・感情は自然なこととして受け入れられる。

④子どもは感情を持つことが許されない

・強い感情は感じてはいけない。

・感情は危険である。

⑤子どもは励まされる

・子どもは潜在能力を認められ、勇気づけられる。

・子どもは成功すればほめられ、失敗すれば慰められる。

⑤子どもは嘲笑される

・子どもは常に判決を下されているように感じている。

・子どもはだいたいにおいてほめられるより批判されてばかりいる。

⑥子育てのやり方はいつもほぼ不変で一貫している

・してよいことと悪いことについて、適切で一貫した態度を示す。

・親の役割は子どもを導くことだと考えている。

・子どもが自分の身体や行動について年相応に判断することが認められる。

⑥教条主義的で厳格、または一貫性がなくてしょっちゅう変わる

・しばしば厳しく罰を与え、柔軟性がない。

・親は子どものボスだと思っている。

・子どものプライバシーをほとんど認めない。

⑦子どもが内面の世界を探求することは推奨される

・子どもは自分に対して優しくすることを学ぶ。

・親は自分の価値観を子どもに教えるが、子どもがどのような価値観を発達させるかは本人の意思を尊重する。

・家庭内には、学び、ユーモア、成長、遊びなどのさまざまな面がある。

⑦子どもの内面の世界を否定する

・子どもは自分に対して優しくすることを学ばない。

・子どもが自分の考えで何かに興味を持ったり学んだりすることより、親の考えで“正しい”ことが重要。

・家庭内の雰囲気が堅苦しくて大仰、または混乱している。

⑧社会との結びつきがある

・人との結びつきは大切にされる。

・親は他人や社会に対する責任について幅広い見方を子どもに伝える。
⑧社会との結びつきがない

・人との真の心の結びつきはほとんどない。

・「外部の人間は危険で信用できない」というイメージを植え付ける。

・人との関係は、相手によく思われたいというのが動機になっている。


  子どもに生じる5つのゆがみ


 コントロールばかりする親に育てられた子どもは、心のバランスが崩れやすく、若いうちから人生が不安定になりやすくなります。特に、感覚が鋭い子どもや神経が繊細な子どもにとっては、コントロールばかりする親の家は大きな苦痛になります。情緒面で大きな打撃を受けるうえ、自由が奪われることは特に耐えがたいからです。また、繊細な子どもは家の問題で自分を責めてしまうこともあります。

 今示した表の、「コントロールばかりする親」の言動にさらされる度合いが強ければ強いほど、子どもはそういう親の「ゆがんだものの見方」を受け継いでしまうリスクが高くなります。読者のなかには、次に示す5つの典型的なゆがみのいずれかが問題を起こしていることに気づく人もいるかもしれません。

1.「権力」や「能力」についての見方のゆがみ

 子どもに完全な服従と依存を要求したり、みじめな思いをさせてきた親のいる家では、子どもは「権力」や「能力」についてゆがんだ見方を身につけてしまう可能性が増します。そういう子どもは、大人になってからも何かにつけて自分は人より能力が低いように感じたり、逆に自分は他人を圧倒するほど強大だと錯覚することがあります。また、自分がすることを自分で決めてはいけないように感じたり、自分に対して力を行使する人間に怖じ気づいたり、その逆にすぐ反発して軽蔑したりすることが多くなります。

 「権力」や「能力」に対する見方がこのようにゆがんでいると、職場での人間関係、配偶者や恋人との関係、自分自身の子どもとの関係などに大きな障害をもたらします。

2.感情や感覚、願望に関するゆがみ

 子どもの心のなかに生じる感情や感覚、願望が親によって押さえつけられたり、その逆に煽られて必要以上に大きくさせられたり、子どもがそういう感情を持つことを親が恐れたり、あるいは子どもに恥ずかしい思いをさせたり、子どもの望みを親がくじいてばかりいると、子どもは感情や感覚や願望に対する考えがゆがんでしまう可能性が増します。

 その結果、子どもは大人になっても「怒り」「恐れ」「悲しみ」などや、時には「喜び」の感情ですら、抱いたらいけないものと感じたり、自分や他人が示すそれらの感情に過剰反応するようになることがあります。愛する人が強い感情を持つことに耐えられなかったり、本当の願望が出てこなくなったり、非現実的な希望を抱くようになることもあります。また、無意識のうちに人生とは苦痛だと思うようになり、その結果、よいことが起きると反射的に居心地悪く感じて身を引くようになることもあります。

 感情や感覚にゆがみがあると、自分の感情を恐れたり、無視したり、他人の感情を誤って解釈してしまうこともあります。願望がゆがんでいると、自分は与えられるべきものがいつも与えられないと感じることがあります。

3.考えのゆがみ

 真実が親によって否定され、言い分が聞いてもらえず、いつも責められたり羞恥心をかきたてられてばかりいると、子どもの考えがゆがんでしまいます。他人による過剰なコントロールを普通のことと感じて疑問を抱かなくなったり、自分の考えが間違っているのではないかといつも思うようになることもあります。親の独断的なもの言いに慣れきってしまった子どもは、何事にもすぐ断定的な結論を下してしまう傾向が増すことがあります。

 このような「考えのゆがみ」を持ったまま成長すると、責任逃ればかりしたり、その逆に他人の責任まで背負い込んで苦しんだりするようにもなります。また、他人や自分の考えを勘違いする危険性も増します。

4.人間関係に関する感覚のゆがみ

 親とあまり親しくしすぎると危険だったり、親があまり長い間、子どもを幼児扱いしていたり、親がきちんと家のことをせず、子どもが小さいうちから家族の世話をやく役をさせられていたりすると、子どもは人間関係に関する感覚がゆがんでしまう可能性が増します。たとえば、だれかと親しくしたいのに近づくことができなかったり、信頼に値しない人を盲目的に信頼したり、逆に他人がまったく信頼できなくなったりすることもあります。また、他人はみな自分にとって危険な存在か、または救ってくれる人のどちらかになり、その人をあるがままに見ることができなくなるかもしれません。人間関係に関する感覚にこういうゆがみがあると、人との心温まる関係や、人間としての喜びを感じることが困難になります。

5.アイデンティティーに関する感覚のゆがみ

 子どもの直感や、主体性、ニーズなどが親によってけなされてばかりいると、自分はいったい何なのか、つまりアイデンティティーについての感覚がゆがんでしまうことがあります。そういう子
どもは大人になっても自分の能力を実際より低く思ったり、本来の力を発揮できなかったり、実力以下のことをしようとする傾向が増します。また、本来持っているはずの個性をなくし、本当の自分ではない外見を作って体裁をつくろうこともあります。自分のアイデンティティーに対する感覚がゆがんでいると、いちばん大切な人間関係、つまり自分自身との関係がおかしくなってしまうのです。

  子どもの対応とその結果

 子どもは大人に対して無力な存在であるとはいえ、ただなすがままにされているわけではありません。子どもは日々成長を続けており、子どもといえどもサバイバルのために全力で困難を乗り越えようとします。不健康で過剰な親のコントロールに対する子どもの反応は、次のようになるでしょう。

①ただ親の言う通りに従う。

②親の言うことを聞かず反抗する。

③バカなことをしたり感情を爆発させたりして親の気をそらせる。

④無感覚になったり、何かへのアディクションに逃避したり、透明人間になったように感じることで、周囲の現実から自分を切り離してしまう。

⑤親に気にいられるよう努力し、親以上に完璧になって他をしのごうとする。

 子どものこれらの行動には、それぞれ次のように得るところと失うところがあります。

①言うことを聞いて従う子どもは、それで親の怒りを受けないですむかもしれないが、自分の意思や行動の自律性を失う。

②言うことを聞かずに反抗する子どもは、それで自分の意思や行動の自律性を守れるかもしれないが、反抗の結果トラブルは悪化し、そのためにネガティブな自己像を持つことがある。

③親の気をそらせる子どもは、それで親の非難をまぬがれるかもしれないが、心の成長が遅れる可能性がある。

④周囲の現実から自分を切り離してしまう子どもは、それで親のコントロールから逃れられるかもしれないが、自我の意識が発達しなくなる。

⑤他をしのごうとする子どもは、それで親に認められるかもしれないが、親の不健康な価値観を内面化(潜在意識にすりこむこと)してしまう。

 親の有害なコントロールに対してこれらの対処法を続けていると、子どもが成長して大人になる過程で、それぞれ次のような長所と欠点が生じる可能性があります。

①言うことを聞いて従う子どもが大人になると
 他人のニーズや望みに敏感になり、それに応えようと努力できる能力は貴重な長所だが、同時に、自分のためにならないことでも他人に要求されると従ってしまう傾向が身につく。

②言うことを聞かずに反抗する子どもが大人になると
 独立心や自由を求める精神は貴重だが、力のあるものには自動的に反抗してしまう傾向を持つことにもなる。その結果、勝ち目のない相手に無謀な闘いを挑んだり、得るものより失うもののほうが多くても闘ってしまうことになりやすい。

③親の気をそらせる子どもが大人になると
 その場を明るくすることができる能力はすばらしい才能だが、静かに集中して正面から問題に取り組まなくてはならない時にも気を散らしてしまうことになりかねない。

④周囲の現実から自分を切り離す癖が身についた子どもが大人になると
 外界からのストレスをシャットアウトし、自分の内面にのみ注意を向けることができる能力は、必要なことに集中したりリラックスするのに役立つ。だがそのために、自分を取り巻く、よくない状況がより悪化することがある。

⑤常に他をしのごうとする子どもが大人になると
 レベルの高いことを達成しようとする性格には、克己、切磋琢磨などすばらしい面があるが、その一方で、達成することばかりが強迫観念的に重要になってしまったり、本当は望んでいないことでも望んでいるように錯覚し、しなければならないと考えてしまう危険性もある。

  新しい方向性 

このように、ストレスの強い家庭環境で育った子どもが身につける対処法は、苦しみのなかを生き延びるのには役立ちますが、ネガティブな反動がともないます。

 しかしすでに大人になっているあなたは、これら5つの方法を超えた方法を考えることができます。この本は、そのためにどうやって有害な親と健康的な力のバランスを取ったらよいかについて示したものです。それができれば、ただ単に親のコントロールに対抗するのではない、積極的な道が開けてくるでしょう。たとえば、次のような方向性を持つことにより、私たちは精神的に成長することができます。

①不本意ながらも親の言う通りにしてばかりいる傾向のある人は、もっと自分自身の道を歩く機会を見つけ、自分のことは自分で決められるようにする。

②反抗してばかりいる傾向のある人は、不愉快な人や状況でも受け入れられる能力を持つようにする(ただし、それはもちろん、虐待的または有害な人や状況まで受け入れるということではありません)。

③気を散らす傾向の強い人は、イヤなことでも注意をそらさずに観察する練習をする(虐待的または有害な人や状況の場合は例外であることは②と同じです)。

④周囲の現実から自分を切り離してしまうことが多い人は、“今現在”“この場所”に集中できるようにもっと努力する。

⑤がんばりすぎる人は、もっと気を楽にしてリラックスできる新しい方法を見つける。


引用おしまい。

続いて毒になる親の具体例などを見ていくことができますが、ここから先は過去に当事者の子供であった人にとっては、読むことにより当時の記憶や感情が蘇り、精神が不安定になることがあります。充分にご注意ください。

 毒親による有害なコントロール
 毒親チェックリスト
 毒親に責任はあるか?
 心が健康な親VSコントロールばかりする親
 親に対する「罪悪感」と「真実」
 過干渉・過保護型の毒親
 愛情を与えない毒親
 完全主義者の毒親
 カルトのような毒親・軍人のような毒親
 言動が支離滅裂な毒親
 ナルシシストの毒親・勝ち負けにこだわる毒親
 虐待・体罰を加える毒親
 責任逃れをする毒親・子どもに依存する毒親
 侮辱的な言葉で自尊心を攻撃する毒親
 性的虐待、体罰、言葉による暴力で脳が萎縮


スーザン・フォワードの著書「毒になる親」の13章には親と対決する方法が載っています。親に直接会うか、手紙を書いて、親が過去にしたことと、それが自分に与えた影響を洗いざらい話し、トラウマを原因となった親に返すのです。

もしあなたが、それをやるつもりであるならば、「毒になる親」と合わせて「論理的思考力とは? 論理的な討論・議論・ディベート・ディスカッション」というサイトを読むことをオススメします。頭のなかを整理するのに役立つはずです。


TOP [ニート・ひきこもり・不登校(登校拒否)の原因と親]

inserted by FC2 system